2018年4月29日日曜日

香港オーディオ事情

26日~28日の3日間香港に行ってきた。現地でNDKのA氏とK氏、MJオーディオフェスティバルに来てくれた香港在住のC氏の4人と合流し、香港のハイエンドショーを主催する音楽雑誌社とハイエンドオーディオショップを回ってきた。

まず訪問したのは「 AUDIO TECHNIQUE 社 」。日本の STEREOSOUNDのような、超高級オーディオ機器を中心に掲載しているオーディオ誌の出版社だ。
ここで、香港のハイエンド事情を聴くと、香港のハイエンドマニアが聴くのは、①レコード、②CD、③SACDだという。デジタル音楽は聴かないのか聴くと、PCは音が悪くてダメだとのこと。

香港ではPCオーディオはほどんど相手にされていないようだ。PCオーディオがダメということは、DACも不要と言うことになる。なんとか、PCオーディオの良さを説明したが、あまり理解してもらえなかったようだ。

試聴室は、半端でないハイエンド製品ばかり。CDプレーヤー、10Mクロック、プリアンプ、パワーアンプとピカピカのばかでかい超高級品が所狭しと並び、太い高級ケーブルで繋がれている。それで、CDで1曲クラシックを聴かせていただいた。

次にセントラルにあるハイエンドオーディオショップを2店舗回った。セントラルは金融街で下町的な九龍地区とは全く違う高級感漂うハイソな街だ。

まずは「Jasdis」
何気ないビルの25階にある高級オーディオショップ。客は一人もおらず若い店員のお兄さんが接客してくれた。ここでも、やはり香港はレコードとCDがメインだという。PCオーディオは論外と言う感じであった。ここも世界中の超弩級オーディオが所狭しと並んでいる。

下写真はHPのものだが、EMM LABの大きなアンプが2台左右に配置され、写真には写っていないが左サイドにCH PrecisionのCDプレーヤー+クロック+電源等が並んでいる。

実際にこの部屋でCDで数曲聴かせてもらった。定位や空間感は素晴らしく音も余裕の音だが、何せ目に見えるだけでも数千万円はしそうな装置なのだから当然だ。しかし、このCDプレーヤーをPCオーディオ+AsoyajiDACに変えると、これまでに聴いたことのない音に変わることは容易に想像できる。問題は、どうしたらそれをわかってもらえるかだ。

次に訪れたのは「avantgarde HONG KONG」
ここもセントラルの何気ないビルの2階だったように思う。年配の叔父さんが数人試聴している。店員さんは気さくな叔父さんで、大きめの試聴室に案内してくれた。聞くとやはり香港ではレコードがメインだという。CDは仕方なく置いているといった感じ。ここでもPCオーディオは全く音が悪いと言っている。香港ではPCオーディオは未だに音が悪いままなのだ。

試聴室の左の壁1面にレコードが収納され、超弩級のレコードプレーヤーが部屋の中央奥に鎮座している。ここでも数曲を試聴させていただいた。下の写真もHPのものだが、とにかく超弩級ばかりで何がなんだかわからない。

ORPHEUSのCDプレーヤーで何かジャズを聴いた後で、何と中村雅俊のレコードを持ってきて、どの曲が良いかと聞かれたので「俺たちの旅」をリクエストした。何と懐かしい曲を、この香港で、しかもレコードで聴くとは!

次に「NILS Lofgren」のレコードから「Keith Don't Go」が掛かった。この曲は、当方も良くデモでやる曲だ。もちろんリッピングしたデジタルデータで。耳にこびりついている。ナイス選曲。

どの曲も、先のお店同様、素晴らしい定位と空間感があり余裕の高級な音だ。これで満足する人がほとんどだろう。しかし私には、PCオーディオ+AsoyajiDACの音が間違いなくこれを超えると確信することができた。PCオーディオとAsoyajiDACをこの装置で鳴らしてみたらこの店員さんはどんな反応をするのだろう、そんなことを考えながら「Keith Don't Go」を聴いた。



さてさて、香港はいまだにアナログがメインだと知った。CDは止む無くといった感じ。なので、オーディオショップは、レコードプレーヤーに関する商品がメイン。

AsoyajiDACを持ち込めば、皆ため息をついてくれるだろうが、PCの環境を誰が広めるのか、メンテナンスするのか、そこが解決しない限り、DACは売れないんだろうなあ。

また、香港のハイエンドは本当に超弩級で、全ての商品が最低数百万円~数千万円だ。ここではデュカロンも安いとの認識。PCなんてCDプレーヤーと比べたら安物で商売にならないという認識もあるようだ。

更に、日本と同様オーディオマニアは高齢化しているとのことで、今更、PCだ、ネットワークだ、なんて面倒なことやりたくないんだろうね。

そのギャップをついて、欧米の高級ブランドメーカーが超弩級アナログ製品を持ち込んでいる。

香港は古い街だからそれでいいのかもしれない。恐らく、香港より、若くて伸び盛りの中国本土の方が、デジタルに関心のあるハイエンドマニアが多くいるのかもしれない。

AUDIO TECHNIQUE 社 のジェネラルマネージャーのレベッカさんが、香港がアジアのハイエンドオーディオの中心だと言っていたが、香港は伝統的な高級アナログオーディオの中で時間が止まっているように感じた。

そして、最新のデジタルオーディオの分野では、近いうちに中国本土に席巻されてしまうのではないかと危惧した。そして、それは日本も同様かもしれないと思いながら霧の香港空港を後にした。