2011年6月2日木曜日

DSD配信?!

e-onkyoやototoy でDSD配信が始まっている。
ototoyは、2009年8月からすでに配信をスタートさせており録音段階からDSD配信を前提とした音源を比較的安価に提供している。一方のe-onkyoは、2011年5月20日に、既存の音源のDSD配信をスタートさせた。


e-onkyoで注目したいのは、同じDSDで作成されているSACDをデジタルリッピングして、DSDファイルを作成し配信する点だ。既に多くの音源が販売されているSACDの豊富な音源を埋もれさせずに再利用しようということだ。

SACDはDSDというデジタルデータでありながら、SACDプレーヤーでアナログ再生するしかなかった。SACDをデジタルリッピングできるソフトウエアは存在せず、多くのSACDファンは落胆していた。(ソニーなどSACDを作成する業者のみが所有しているのだろう。)

ところが、e-onkyoは、業務用だがリッピングソフトを使ってSACDをDSDにリッピングして配信すると言っている。

以下が、AV Watchの藤本健のDigital Audio Labolatoryでのe-onkyoの藤田氏と黒沢氏へのインタビューの一部だ。

――では、ここから藤田さんにもお伺いしていきたいと思いますが、まずは藤田さんがe-onkyo musicでお仕事をされることになった経緯などをお話いただけますか?藤田:2009年の末だったでしょうか、もっとハイレゾのコンテンツを増やしたいということで相談があったのです。そこでSACDのパッケージがあるのなら、SACDを元にしてハイレゾのデータを生成しようと提案しました。
黒澤:ハイレゾのデータを提供してもらえるレーベルはそれほど多くはないので、SACDから作ってしまおうというわけですね。当時はまだDRMフリーをはじめていなかったので、まず24bit/96kHzなどのPCMデータを生成した上で、DRMをつけてWMA Losslessに変換してリリースしていました。
――SACDからアナログで再生してPCMへ変換するというわけですよね。
藤田:いいえ、直接DSDデータを取り出し、それをPCMに変換するという方法を使いました。
――え? そんな方法があるのですか?
藤田:もちろん、一般には使えないものですが、業務用で抜き出すツールがあるので、これを用いてDSDのファイルとして抽出した後、私の手元にあるDSDに対応しているDAWであるPyramixなどを用いて24bit/96kHzのPCM変換しておりました。

かつては、(個人で楽しむ範囲内であっても)CDをリッピングすることは、著作権上問題があるとのことで、こっそりリッピングしていたものだ。DVD-AUDIOはもっとナーバスで、リッピングソフトはほとんど無いか、あっても制約が多く実用にはならなかった。それが今や、CDリッピングは当たり前、DVD-AUDIOも何の制約もなくリッピングできる。

ところが、SACDだけが全くといっていいほどリッピングツールが出てこなかった(私が知らなかっただけかもしれませんが)。特別な情報を入手できない個人にはそんなものはつくれないのだろうと思っていた。

そうした中、コルグが自社の録音機にDSDフォーマットを採用し、おまけについているDSD再生ソフト「AudioGate」が注目を浴びた。これを使えばPCでDSDファイルを再生できるのだ。これに注目したototoyがDSDファイルの配信を開始した。コルグもAudioGateを録音機を買わなくても使用できるよう一般公開した。

すわ!AudioGateでSACDが直接再生できるかも!?と思ったが、再生もリッピングも不可能だった。

ところが、SACD作成現場にしか存在しなかった(?)リッピングツールが、音楽配信業者の手元にあることを上記インタビューでe-onkyoが公言している。

配信業者が所有しているのになぜ個人用には存在しないのだろう。配信業者はこれを使えば、SACDをデジタル音源に変換して(DSD)大儲けできる。

SACDをリッピングしこれを配信することは時代の流れであり喜ばしいことだ。

しかし、既に多くの音楽愛好家は膨大な量のSACDを所有している。そうした大切なユーザーにPC上でSACDを聴く機会を与えず、聴きたければ配信業者にもう一度お金を払ってダウンロードせよ!というのはあまりに乱暴ではないか。

ソニーは、既存のSACD所有者と未来のSACD購入者に対し、リッピングしてPCで聴く手段(リッピングソフト)を提供すべきだ。

e-onkyoがSACDをリッピングするなら、SACD所有者も同じように対価を払った購入したSACDをリッピングしてPC上で聴く権利があるのではないか。

そうすることで、SACDは再び脚光を浴びて奇跡の復活を遂げる可能性もある。e-onkyoや一部の業者だけが利益を享受し、既存ユーザーが不利益を蒙るやり方は、ソニーがSACDの将来性を自ら立ち切ってしまう自殺行為ではないだろうか。

ソニーはSACDをどうするつもりなのだろう。このまま歴史の闇に葬り去るのであれば余りに惜しい。この豊富なハイレゾ音源をデジタルの土俵に持ち込めば、PCMの世界が一気にDSDに流れることだって十分に考えれるのだ。ソニーはもう一度音楽の世界で主導権を握り、アップルに一泡吹かせることもできるかもしれないのだ。

豊富なSACDを無駄にしない為にも、どなたかリッピングソフトを作ってください!できればAudioGateにリッピング機能が付けば最高なのだけれども。

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