2015年11月28日土曜日

真空管に挑戦 プリアンプ2

2段電圧増幅回路の次段を勉強していたら、S氏が新しい回路図を送ってきた。
最初見たとき、プレート抵抗もないし、カソードから信号を取っているし、バイアスに掛ける電圧も恐ろしく高いし、なんなんだこの回路は!?と驚いたが、どうやらカソード・フォロア回路というらしい。何やらオペアンプを使ったバッファでゲイン1倍の非反転増幅回路=ボルテージフォロア回路に似ている。とにかく調べてみよう。

やはりカソード・フォロアはゲインが1倍以下で出力インピーダンスが低くバッファとして使われているようだ。

部品点数を減らして音質を確保するためにトーンコントロール(高域、低域)も除外した。

まずはS氏の試作



おおお! ハムノイズが全くない! なんだこれは! しかも音がまるでデジタルのように美しく解像度が高い。恐るべしカソードフォロア!とびっくり仰天したが、何かが足りない。そうだ、Watzの時の色艶が足りない。うーん。素晴らしい音がなのだが。真空管らしさが無くなりどちらかといえば高音質のデジタルのような音。

そこで、S氏と相談。抵抗とカップリングコンを交換してみることにした。当初抵抗はRAYの金被を使っていたのだが、これを止めてアムトランスのAMRG(3/4W)に、フィルムコンは三水音響のブラックマター1μに変えてみた。




抵抗とコンデンサでこれほどまでに音が変わるとは!

音に深見と厚みが加わり色と艶が戻った。言うことなし!衝撃的な音だ。
これほどの音はデジタルだけでは絶対に出ないと思う。

デジタル段の信号を真空管で電圧増幅することでアナログ的な要素をふんだんに加え、最後に真空管ではなく半導体アンプで電力増幅する。こんなやり方はほとんどの人がやっていないのではないか。デジタル-半導体プリアンプ-半導体パワーアンプ、もしくは、デジタル-真空管プリアンプ-真空管パワーアンプが普通だろう。

しかしデジタル-真空管プリアンプ-半導体パワーアンプで、これまでに聴いたことのないほどの驚きの音が出てくる。これには百戦錬磨のS氏ですら驚いている。

それにしてもこれほどシンプルな回路で部品点数も少なく使っている真空管も高価なものではない。それでこの音がでるのだから真空管プリは音質だけではなく、コストパフォーマンスも最高だ。


2015年11月15日日曜日

真空管に挑戦 プリアンプ1

12AU7を使ったプリアンプ

Watzのプリアンプがとてもいい音だったので、部品などを総入れ替えして作り直したものが更にいい音になった。デジタルだけでも解像度も高く美しい音がだせるのだが、真空管が入ると、圧倒的に音に色と艶と厚みが付く。そこで、真空管に真剣に取り組んでみることにした。

最初に電圧増幅回路の設計だ。

まず最初に、真空管を選ばないと始まらない。そこで、Watzで使った12AU7を使ってみることにした。

12AU7のメーカーの推奨値は以下のとおり
                    データシート  実測
Eh ヒーター電圧         6.3V×0.3A  
Eb 電源電圧(プレート電圧)  250V       110V
Eg バイアス            -8.5V       -4.0V
Rk カソードバイアス抵抗    ―         ―
Ib プレート電流          10.5mA      3mA
gm 相互コンダクタンス     2.2         1.85
rp 内部抵抗            7.7KΩ       10KΩ
μ 増幅率             17         18.5

*実測は「情熱の真空管アンプ」(木村哲)の巻末データより


12AU7のEp-Ip特性(プレート特性) *GEのデータシートより


メーカーの推奨値を使えば簡単に設計できるそうだが、電源電圧が250Vでプレート電流が10.5mAとかなり大きい。Watzの回路だとプレート電圧はもっと小さい感じがする。よくわからないので、特性図を使って自分で回路を設計してみることにする。
Ebb(電源電圧)
Rp(負荷抵抗) プレートに電圧を与える。負荷抵抗と電源電圧でロードラインを引き動作点を決める。
Rk(カソード抵抗) カソードに電圧を発生させる。自己バイアス方式の時、グリッド電圧は0Vなので、カソード電圧に対し、相対的にグリッド電圧が同じ値マイナスとなる。
Rg(グリッドリーク抵抗) 自己バイアス方式で、グリッドの電位を0Vにするためにグリッドをアースに接続するためのもの。


まず最初に電源電圧を300Vに決める。
プレート負荷抵抗を100KΩとする。
この時の最大プレート電流は 300V÷100KΩ=3mA
プレート特性図に、このロードラインを書き込む。
バイアス電圧を-4Vに決める。
これで動作点のプレート電圧は95V、プレート電流は2mAとなる。
この時、カソード電圧を4Vにするためのカソード抵抗は、-4V÷2mA=2kΩ



この増幅回路の入力インピーダンスはグリッドリーク抵抗の値そのものになる。グリッドリーク抵抗が小さいと入力に電流が流れてしまうので、大きくしなければならない。しかし大きすぎると、プレートからグリッドに電流が流れバイアスが不安定になり、真空管が熱暴走してしまうらしい。
そこで、データシートの最大値1MΩの半分の500KΩとする。
なお、直流域では、負荷抵抗は100KΩであるが、交流域での負荷抵抗は、100kΩと500kΩのパラ抵抗値で83kΩとなる。
次段のグリッドリーク抵抗は、直流と交流の負荷抵抗値が大きく違わないように設定する。
ゲインの計算をするため、交流のロードラインを引く
Ep=95V+(2mA×82.5KΩ)=260V
Ip=260V÷82.5V=3.15mA
入力信号がバイアスを中心に±2V振れたとすると、出力電圧は67V~121Vで54V振れる。
よってゲインは 54÷4=13.5倍となる



これで、とりあえず初段が完成!次は、次段だ。ただし、先に次段を設計してから初段を設計しないと初段の値が決まらないようだ。次段が決まったら初段はやり直すことにする。

ところで、Watzの回路を見ると、グリッドリーク抵抗がない。その代わりに100KΩのボリュームが入っているがこれがグリッドリーク抵抗の代わりなのだろうか。

2015年11月1日日曜日

真空管プリ 2


あまりにいい音なのでS氏と一緒にWATZの真空管プリアンプをそっくり作り変えた。カップリングコンは、OKAYAのメタライズド・ポリプロピレン・フィルムコンHCP0.47μFを使った。

完成後、ヒーター電源が真空管なしだと6.3Vでるのだが、真空管を装着すると電圧降下し2V程にしかならないトラブルが発生。どうやっても6.3Vにならず、S氏に修理依頼したところ、トランスの6.3V出力が、電流不足で電圧が出ていないようだとのことで、ヒーター電源を別トランスにしたところ、問題なく6.3Vが出力された。やはりトランスの問題だったようだ。

電源トランスは東栄さんのP-35だが、S氏のもWATZのも問題なく電圧がでているので、個体の問題だろうか。いずれにしてもトランスで問題が起きたのは始めてのことで思いもよらぬことだった。

さて、いろいろあったがなんとか音出し。

おおお、低域が驚くほど出てくる。これは凄い。カップリングコンをWATZでは0.1μFだったのを0.47μFに増やした効果かもしれない。デジタル部をいくらやってもこれほどの低音を出すことはできなかった。やはり音作りに真空管プリは必要なのだった。

FULL MUSICの真空管と相性はばっちりだ。