パソコンの音質については、様々なことが言われている。良いことは一つも無く悪いことばかりだ。
パソコンはノイズの塊だから音が悪い。特に電源はスイッチングだから最悪。ケースやCPUクーラーの形状によってすら音が違う。SSDは音が悪い。いや良い。コピーすると音が変わる。再生ソフトによって音が変わる。メモリプレイは音が良い。などなど。
パソコン内部は全てデジタルである。プログラムもデータも全てデジタルだ。なぜならCPUは0と1の計算しかできないからだ。
リッピングされた音楽ファイルも0と1のバイナリデータだ。プログラムもデータも膨大な数の0と1の数値でできている。デジタルである以上どこかで割り切りが必要なので、小数点以下の計算結果については必ず誤差が生じる。
しかし、データのコピーや転送については必ずエラー訂正が行われて100%のバイナリ一致が保証される。コピーしたり転送したりする度にデータの内容が変わってしまうようでは、パソコンは実用に耐えないだろう。
パソコン内部にどんなにノイズがあろうが、電源がしょぼかろうが、パソコン内部や周辺機器間でコピーや転送されたデータは、必ず元のデータと一致する。これは音楽ファイルも同じだ。
音声信号はアナログの電気信号で、波形そのものが音楽であるからノイズに乱れ歪む。しかしデジタルは、電圧が高いか低いかのどちらか、すなわち0と1の状態しかなく、そこには音声信号の波形は存在せず、ノイズに乱れ歪み0が1になろうが1が0になろうが、きちんとエラー訂正されて必ず元のデータに一致する。それがデジタルだ。
ノイズがあろうがなかろうが綺麗な電源を使おうが使うまいが、バイナリは一致する。電源で美しく力強い0や1のデジタル信号になったとしても、0と1であることに変わりは無く、0と1は単なるバイナリデータであり、音声信号の波形ではないので、音質には全く関係がないのだ。
だから、パソコンが扱うバイナリデータは、ノイズや電源の影響は全く受けないはずなのだ。
しかし、現実にはパソコン内部で音が変わる。なぜだろう?
ほんとうに音が変わのであれば、バイナリデータである以上、単純明快だ。元のデータとコピーや転送後のデータが一致していないとしか言いようがない。
考えられる可能性は二つ。
第一は、パソコンが常にエラー訂正に失敗している可能性だ。もしそうなら、物理的なノイズ対策や電源強化は理に適っている。しかし、これは考えにくい。パソコンのエラー訂正がいい加減ならパソコンはエラーだらけになり実用に耐えないからだ。
第二は、ソフトウエア上の処理で、バイナリを狂わせている可能性だ。Windowsでもカーネルを通すとバイナリが一致せず、それを回避するASIOやWASAPIではバイナリは一致する。また、再生ソフトによる音質の違いがあることもこれで説明できる。再生ソフトとWindowsの連携や相性に問題があるのかもしれない。いずれにしてもソフトウエア上の処理の問題であれば、物理的なノイズ対策や電源対策は意味がなくなる。
整理をすると。
本来ならパソコンはエラー訂正をするのでバイナリは完全に一致する。従って物理的なノイズや電源の影響は一切関係がない。
しかし、現実には、明確に音が変わる。
これはバイナリが一致していないとしか考えられない。
エラー訂正に失敗しているなら、ノイズ対策や電源対策は有効である。しかし、これは考えにくい。
再生ソフトやWindowsのソフトウエア的な処理に問題があってバイナリが狂う可能性のほうが高いと思われる。となればこれはソフトウエア的な問題であり、物理的なノイズ対策や電源対策は意味がない。
さて、それでも電源やケースやCPUクーラーのファンの形状やSDDとHDDやその他諸々の物理的な要因で、音は変わるのだろうか。
私の個人的な感覚では、ソフトウエア的に音が変わるのは確かに感じることができる。WindowsのダイレクトサウンドとASIOやWASAPIでは音が変わるし、再生ソフトの違いで音は明確に変わる。
しかし、物理的なハードウエアの違いで音質の違いをはっきりと感じたことはない。もしあるとすれば、エラー出まくりエラー訂正も効かないような酷いハードウエアを使っている場合かと思う。それで、まともなハードウエアにしたら音質が良くなったと言われても問題外の話ということになるのだが。
*なおサウンドカードの音が良い悪いは今回の考察の対象外である。サウンドカードは、パソコンの内部でバイナリデータをアナログに変換しており、アナログ変換された音声信号は確実にパソコン内部のノイズや電源に影響されるからである。今回の考察は、バイナリデータなのに音が変わるのはなぜか?ということである。
0 件のコメント:
コメントを投稿