2011年8月21日日曜日

DSD-DACの製作に挑戦!

意外と簡単にできるDSD-DAC



最近は、AudioGateが登場し、DSDデータのWeb配信も始まり、ようやくPC上でDSDデータを聴くことができるようになった。しかしこれは、あくまでも再生ソフトがDSDをPCMに変換しているだけで、DSDの音を聴いているのではなく、PCMの音を聴いているのである。

PCMは、AD変換時に、まずはDSDの録音フォーマットである1bitPDM(Pulse Density Modulation,パルス密度変調=)処理され、その後、間引き(サンプリング、量子化)されてPCMに変換される。つまりDSDは原理的には間引きはなく、確実にPCMより高音質ということだ。

しかし、オーディオの世界で、現状、DSDをデジタルのまま聴くことはできない。SACDプレーヤーでアナログ変換された音声を聴くことしかできないのだ。これほどの高音質のデータを、PCM(WAVE)のように、デジタルのままで聴いてみたいと思うのは自然のことだろう。

オーディオ自作派の方々は、とっくにこれを実現して、DSDの音を楽しんでいるのに、我々素人は、唯々涎を垂らして見ているしかないのだろうか。

いや、それがそうでもないのだ。実は、完成基盤をいくつか買ってきて繋ぐだけで簡単にDSD-DACができてしまうことを知ってしまった。

そもそも、DSDの音をそのまま聴くには、①再生ソフトがDSD信号を出力できること、②DDCがUSB経由でDSD信号を受けられること、DSD信号を出力できること、③DACがDSD信号を受けてデジタル・アナログ変換できることが必要だ。

この②と③が完成基盤として販売されているのである。①もこれに添付されている。具体的には、エレクトロアートのUDA基板とツイストペアオーディオのBaffaroⅡorⅢだ。これを何本かの線で繋ぎ、電源を繋ぐだけでDSD-DACができてしまうのだ。

もちろん、半田ごてとテスターぐらいは必要だが、非常に簡単だ。自作素人の皆さんもこれを参考に是非ともDSD-DACに挑戦してはいかがだろうか。

自分の備忘録のため、DSD-DACを作ってみたいという自作素人の方の為に、私の、DSD-DACの作り方について簡単な解説をしようと思う。


DSDネイティブ再生に必要なもの

DSDデータ
最近はダウンロードも可能だが、まだまだ少ない。AudioGateでPCMをDSDに変換する。

DSD再生ソフト
ソフトでDSDをPCMに変換して再生するAudioGateやFoobar2000があるが、DSDをDSDのまま再生してくれるソフトは、エレアトさんのUDA基板についてくる「PlayAudio」やなかたさんのUDA基盤専用の(WindowsVista7)の「UDAPlayer」などがある。

DSD-DDC
エレクトロアートの「USB DUAL AUDIO(UDA)基板」がマニアの間では有名だ。エレアトの田力さんは、もう随分行き渡ったと最近は生産を縮小している。次回の頒布は10月下旬になる見込み。
私は、UDA基板を使用した。

DSD-DAC
エレクトロアートのUDA基板のオプション基板である「DSD1794Aデジタルドメイン基板」があるが、UDA基板が必要なのと、自分で部品を買って完成させる必要がある。

完成基板としては、ツイストペアオーディオの「BaffaroⅡ」「BaffaroⅢ」がある。現在、BaffaroⅡは製造中止だが、代わりにBaffaroⅢが販売されている。しかしこのDAC、販売日に約1分で完売になるほどの超人気。現在は、2~3週間おきに小分けして販売されている。
私は、BaffaroⅡを使用した。

IV変換用トランス
BaffaroⅡのアナログ音声出力は電流出力なので、IV変換が必要となる。IV変換には、①オペアンプ、②ディスクリート、③抵抗のみ、④トランスを使う方法がある。

Baffaro基板に取り付けるIV変換基板も販売されているが、最近は、トランスを利用する方法が密かに注目されている。しかもトランスをつなげるだけなので非常に簡単だ。ただし、トランスは売れないのでどんどん生産が縮小され反対に価格も高騰している。安いものだと500円くらいからあるが、音質のいいものだと1個8万円というものある。

今回は、秋葉原ラジオセンターの東栄変成器㈱で見つけた「オリエンタルコアの1次600Ω、2次10KΩのトランス」を使ってみた。1個千円で格安。音もまあまあだ。2次側に3KΩの抵抗を並列接続している。

BaffaroⅡのアナログ出力(+GND-)を、トランスの1次側に繋ぎ(真ん中GND)、2次側(+、-、真ん中は不使用)をRCA端子(+を真ん中に)に接続する。



電源
UDA基板もBaffaroⅡもDC5Vで稼動。私はトランスと安定化電源キットで自作し、両方に5Vを供給している。ただし、電源だけは発火等の危険があるので、素人の方は、ACアダプターや電池や市販の電源を使うことをお勧めする。
トランスを使う場合は、AC出力6V(DC8.4V)あたりを使うと良い。安定化電源のキットなどを使うと簡単だ。




DSD-DACの製作(写真を参照)

まず、UDA基板のP6出力を、BaffaroⅡのシリアル入力に繋ぐ。


BaffaroⅡのアナログ出力からIV変換用トランス1次に接続、2次からRCA端子に繋ぐ。



DC5Vを用意し、UDA基板とBaffaroⅡに繋ぐ。



あとは基盤の設定をし、PCとUSBで繋ぎDSDを再生ソフトで再生すれば、ケーシングしなくても音は出る。

基板への入力、基板からの出力は直接、銅線を半田付けしてもいいが、写真にあるような青や緑の端子を使うと便利だ。


音が出たら、後は、じっくりケースを作ってみよう。適当な大きさのタカチのアルミケースを削り必要な穴を空ける。電気ドリルとトリマーとやすりがあれば便利。これが一番大変だと思う。

基板をケースに取り付けるには、ケースに穴をあけてスペーサーでネジ止めする方法が正当だが、スペーサーペテットというシールでケースに接着する便利グッズもある。私はこれを使っている。
私の写真では電源は同一ケース内にあるが、できれば別ケースにした方がいいだろう。また、電源ももう少し強化した方がいいかもしれない。電池や市販の電源ならもっと簡単だろう。


UDA(USB DUAL AUIDIO)基板の設定

UDA基盤は、基本的にDDCである。USBで信号を受け、SPDIFもしくはI2Sで信号を出力する。ファームウエアのROMを2つ持っており、これを切り替えて使えるので「USB DUAL AUDIO基盤」という。
ROMの使い分けは、JP1とJP4で行う。JP1をショート、JP4をオープンにすると、バルク転送モードになり、JP1をオープン。JP4をショートにすると、アイソクロナスモードとなる。


JP1:ショート
・ バルク転送モード
・ 再生可能フォーマット(WAVE ~192kHz、DSD)
・ DSD再生可能ソフト ○PlayAudio (DSD-DIFF)、×UDAPlayer

JP4:ショート
・ アイソクロナスモード *世界で唯一アイソクロナスモードでDSDの再生が可能!
・ USB Class1.0ファームウエア(Windows用) or USB class2.0ファームウエア(ubuntu,Mac)
・ 再生可能フォーマット(WAVE ~96kHz、DSD)
・ DSD再生可能ソフト ×PlayAudio、○UDAPlayer(DSD-DSF)

P6はシリアル出力で、この2、3、4をBaffaroⅡのDCK、D1、D2に接続する。JP2をショートしI2Sにする。

P6出力       BaffaroⅡ入力
1 
2 DSPCLK  →  DCK
3 DSD_L   →  D1
4 DSD_R   →  D2
5 
6 
7 GND    →  GND

JP2:ショート I2S

P1にDC5Vを入力

BaffaroⅡ基板の設定は以下のとおり

P6からの出力を、上記のとおり接続する。DIPスイッチは以下のとおり。SPDIFのON、OFFスイッチは、OFFにしておく。


DIPスイッチ
1 ON(Stereo)
2 OFF
3 OFF
4 OFF(DSD)

SPDIFスイッチ OFF

VDにDC5V電源を入力

A_MUTEとLOCKにLEDを接続すると、DDCからの信号が届くと点灯する。LOCKのLEDを長めに結線してケースに外出しで、電源ONと信号のLOCKを確認できるので便利だ。

DSDフォーマットと再生ソフト

DSD再生ソフトは、PlayAudioとUDAPlayerを使う。DSDのフォーマットには困ったものだ。主にプロが使う「DIFF」とソニーが一般ユーザー向けに決めた「DSF」がある。再生ソフトによって再生できるフォーマットが異なる。SACDをリッピングする時、どの再生ソフトを使うか決めてから、フォーマットを決める必要がある。現在、DIFF⇔DSFをフォーマット変換する入手可能なソフトはない。ISOでリッピングして、ScaretbookでISO⇒DSF、ISO⇒DIFFは可能だ。

PlayAudio
バルク転送モード(JP1をショート)
再生可能フォーマット DSD( DIFF )、WAVE( 44.1~192kHz )


UDAPlayer
アイソクロナスモード(JP4をショート)
再生可能フォーマット DSD( DSF )、WAVE( 44.1~96kHz ) 

8 件のコメント:

  1. エレアトのDDC基板の写真、JP1(バルク転送)-JP4の表記が逆になっています
    http://fpga.cool.coocan.jp/electrart/USB_DUAL_AUDIO-2.jpg
    現在のショートピンの差込では、アイソクロナスモードで動作をしていると、思われます

    とんび

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  2. とんびさん
    ほんとですね。間違えています。今夜直します(笑)。

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  3. 失礼ながら、配線手直ししたほうが良いですね。
    最低でもAC100Vラインの配線は直しては思います。
    100Vの配線がループしていて、その輪の中に電源基板がスッポリと入っていますが、このままでは100Vラインが作る磁界の中に基板が晒されているわけでノイズ発生のもとです。
    ここは電源スイッチからトランスまでを行きの配線に沿わせて(出来れば捩って)下さい。
    お使いの線径では捩るのは大変ですから、線径を細くしましょう。5V端子台からUDA基板に配線している白色コード程度で十分です。100Vラインには5Vラインの1/10も電流は流れません。

    更に、IV変換用トランスからPINジャックまでもホットとコールドを捩って下さい。今のままでは電源トランスからのハムを拾うと思います。
    基本的に電源トランスなどの近くに信号ラインやジャックを配置しないほうが無難です。

    以上お節介とは思いながらも気になったもので。
    気分を害されたのでしたらご容赦のほど。

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  4. Kajiさん
    アドバイスありがとうございます。

    私は、自作素人でもなんとか頑張ればできる!の精神でやっています。無謀だと思いますが、すべて勉強しながら、いろんな方々に教えていただきながらアドバイスを頂きながらの珍道中です。

    そして、なんとか完成したら、その成果を素人の方々にできるだけわかりやすくお伝えしたいと思っています。

    ただし、間違っていることも結構あるので、こうしてご指摘やアドバイスをいただけえるとほんとうに助かります。

    さっそくご指摘のとおりやってみました。写真アップしました(トップの写真を差し替えました)。

    またお気づきの点がありましたら、どうか遠慮なくご教授くださいますようお願いします。

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  5. asoyajiさん

    早速綺麗になってますね。
    この辺りの配線テクニックは、自作界では有名なぺるけさんのHP「情熱の真空管」の中の「私のアンプ設計マニュアル」、トラブルシューティング編、ハムが出る、が非常に懇切丁寧です。その他も参考になる情報がいっぱい詰まっています。

    私はアンプ作りやDAC作りをメインにしています。
    asoyajiさんのHPを見て、詳しい設定手順説明に従ってVoyage MPDの世界に無事に踏み込むことが出来、こちらこそ感謝しきれません。

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  6. Kajiさん
    「情熱の真空管」持っています!! 私も以前真空管アンプを勉強しようと思って購入したのですが、さあ作るぞ!!と思った矢先に、PCオーディオの波が押し寄せてきて、つい道を踏み外しておりました。

    そういえばそんなことが書いてあったような・・・。もう一度読み直してみます(苦笑)。

    >私はアンプ作りやDAC作りをメインにしています。

    アンプやDACを作れる人が羨ましくて勉強してみたのですが、なかなか細かい回路の半田付けが難しそうですし、奥も深そうです。

    VoyageMPDはほんとうに素晴らしいですね。少しでもお役に立てたのならこれほど嬉しいことはありません。

    これからもよろしくお願いします。

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  7. ここまで来たら、ついでに

    ・UDA基板のPINジャックとUSBハウジングはケースから絶縁。

    ・代わりに、電源基板出力アースをケースに配線で接続。

    ・トランス外装金属部分はケースに接触させてアース。

    等すればぐっと良くなります。電位が定まらない金属部分を作らないようにしましょう。

    更にできれば、大きなケースに移して、電源トランスとI/V変換トランスを離します。近いとトランス同士が磁気結合するためにハムノイズを拾う可能性があります。

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  8. Kajiさん
    なるほどそうなんですね。勉強になります。さっそくやってみたいと思います。

    そうなんです。大きなケースに移そうと思ってはいるんですが、コンパクトさが気に入ってしまって・・・・でもやはり近いうちに大きなケースに移そうと思います。

    アドバイスありがとうございます。助かります。

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