学生の頃は井の頭公園の側に住んでいたので、よく吉祥寺のジャズ喫茶に通った。アパートではアイワのステレオラジカセにデンオンのレコードプレーヤーを繋ぎ、Fostexの10cm自作バスレフスピーカーで聴いていた貧乏学生には、ジャズ喫茶の音は驚愕的だった。
吉祥寺のファンキーは、吉祥寺の街を買えてしまった男と言われた、伝説の故野口伊織氏が作ったジャズ喫茶。1F,2F,BFがあり、それぞれに違うシステムがあった。2FにアルテックのA7、BFにJBLのパラゴンという怪獣のように馬鹿でかいスピーカーがあった。当時のジャズ喫茶のスピーカーはたいていJBLで、暗い照明の部屋全体を揺るがすような大音量でレコードを鳴らしていた。客はコーヒーかコーラを注文し、目を閉じて黙ってひたすら何時間も瞑想するかのようにジャズを聴くのだ。若者達はジャズ喫茶でマイルスやコルトレーンを聴き、その音を鳴らすJBLに憧れたものだ。
同じく吉祥寺のアウトバックは、ファンキーと違って、クロスオーバー中心の店で、店内も明るく開放的な雰囲気があった。ここで初めて、チックコリアの「リターン・トゥー・フォエバー」やアル・ディメオラの「エレガントジプシー」を聴いた。マイルスやコルトレーンの暗闇の中から沸き上がるような金管楽器の響きとは全く異質の、明るく瑞々しく繊細で鋭利なエレクトリックサウンドに心が躍った。新しい時代が来たと直感した。
JBL パラゴン |
その後しばらくしてファンキーは改装・閉店した。しかし改装後のファンキーは我々の知るジャズ喫茶ではなく、女性達がお茶をしながら軽音楽を楽しむ店に変わってしまった。その後、就職しジャズ喫茶に行くことはなくなった。そして、多くのジャズ喫茶がその姿を消していった。
最近、イーグルの後藤雅洋氏の本を書店で目にし、未だに健在で頑張っているジャズ喫茶があることを知った。早速、四谷のイーグルと吉祥寺のMEGに行った。イーグルはほとんど昔と変わっておらず、壁に埋め込まれたJBL4344が懐かしかった。MEGは、かの有名人寺島靖国氏のお店。JBLではなく真っ赤なアバンギャルドDUOが燦然と鎮座ましていた。「なんか違うなあ、やっぱりジャズ喫茶はJBLでないと」と思ってしまった。
金沢に、穆燃というジャズ喫茶がある。スピーカーはジャス喫茶の定番でJBLだ。しかも、片側2個ウーハー搭載の4350Bをマルチアンプで鳴らすというもの凄い店。音は4343や4344とは比べものにならない。低音が音が立方体で迫ってくる。厚く角が直角に切り立つ立方体だ。まあとにかく凄い。これが同じ音楽かと思わされる。マサラキーマカレーが絶品。
全国には、数は少ないがジャズ喫茶は残っている。若い頃ジャズ喫茶に通った団塊の世代が支えているのであろうか。店主もお客も高齢化し後30年もすれば完全に無くなってしまうのだろうか。一関にあるというベイシーというお店にもいつか行ってみたい。
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